語頭の「ん」

日本語において、共通語には基本的に「ん」より始まる単語が存在しない。ただし方言音などを見ると「生まれる」など語頭に鼻濁音[ŋ]がくる単語があり、それを「ん」で表現することがある。1944年文部省が制定した『發音符號』にて、語頭の鼻濁音は「ん」と同じであるが、語頭に「ん」を置くのは違和感があるため、「う゚」を使用するように定めたが、この表記はほとんど浸透しなかった。現在、上記の表記を共通語音「う」と特に区別する場合、「ん」が使用されることもある。

  • 日本では琉球語に「ン」から始まる単語が多数見られ、中でも宮古方言の「んみゃーち(ようこそ、の意)」は有名。与那国方言などにもみられる。
  • 本来「」「」は「ンマ」 (mma)「ンメ」 (mme) と発音されており、それが方言として残っている地方もある。古典的仮名遣いでは、「馬」は「むま」と書かれた。また、これらはいずれも大陸からの移入種であり、遡れば中国語の「マー」「メイ」という発音にたどり着く。
  • 日本の東北方言には、「んだ」(そうだ)、「んで」(それで)のように、そ系列の指示語助詞の組み合わせの一部に「ん」から始まる文節がある。
  • 近年の口語では「そんな」という単語を「んな」と省略して発音する事が増えている(用例:んな事あるわけ無いだろう)。文頭に「ん」が来ている例として指摘できる。

日本語以外の言語に於いても、「ン」から始まる言葉は少ない。外国語の単語を仮名表記する際、基本的には鼻音で始まり後続する音が母音でない場合に、「ン」で始まる言葉として表されることがある。ただし、外国語音を日本語でどう捉えるか、仮名でどのように表記するかという問題があるため、その多寡を単純には結論づけられない。

  • 中国語の方言である広東語には「ng」および「m」という音節が存在する。例えば名字によくある「呉」の発音は「ng」であり、香港の喜劇俳優「呉孟達」の名前を片仮名表記する場合「ン・マンタッ」と書く。
  • 台湾語閩南語)で「黄」の発音も「ng」である。
  • インドネシアバリ島の玄関口であるデンパサール国際空港の正式名称は、ングラライ国際空港 (Bandara Internasional Ngurah Rai / Ngurah Rai Airport) であり、これは独立戦争の英雄グスティ・ングラ・ライに因んでいる。ただしこれについては、「グラライ」の片仮名表記もまた存在する。
  • アフリカではンジャメナンゴマンゴロンゴロキリマンジャロ(Kilima-Njaro)、ユッスー・ンドゥールなど「ン」から始まる名前・単語が存在する。ただし「ン」の代わりに、「ウン」、「エン」、「ヌ」、「ム」に置き換えられることがある。(エムボマエンクルマヌデレバタボ・ムベキ)
  • 某という言い換えと同様に、内容をぼかす用法がある。例:数千円のことを「ん千円」と言うなど(ただしこれは口語的表現で、文章の場合は「うん千円」などとするのが伝統的表記)。

「ん」という文字を表す目的で単独で使用されることがある。

  • いろは四十八組に「ん組」は存在しなかった。最後に追加された48番目の組は「本組」と称した。
  • しりとり遊びにおいては、次に繋げられないために、「最後に『ん』の付く言葉を言った者が負け」というルールになっていることが普通である。
  • 発音が聞き取りにくいため、日本の自動車用ナンバープレートには「ん」が用いられない。
  • 五味太郎作の絵本に「んんんん」という作品がある。

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